疲労回復に必要な栄養素を薬剤師が解説!

fatigue-recovery-vitamin疲れ・ストレス

記事監修

+kampo(プラス漢方) 笹森有起
オフィス薬局 管理薬剤師

「睡眠をとっているのに、なかなか疲れが取れない…」

「なんだかだるさが続く…」

その疲れ、栄養不足が原因かもしれません。

疲労の回復には、良質な睡眠と栄養素の補給が大切です。
栄養素が不足していると疲れやすくなるのはもちろん、体の様々な機能に影響を及ぼすおそれがあります。

体の不調が続くようなら、食事に含まれる栄養素に注目してみませんか。

この記事では、疲労の回復に役立つ栄養素について解説していきます。

疲れやすいのは、栄養不足が原因?

毎日の食事は、体に栄養を取り入れる重要な役割をはたしています。

1日3食きちんと食べているよ!という声が聞こえてきそうですが、ただ食事をすれば良いというわけではありません。

体が必要としている栄養を必要なだけ取り入れることが大切なのです。

この章では、疲労回復時に積極的に摂りたい栄養素を紹介します。

疲労とは?

「疲労」とは、精神的、肉体的な過度の負荷により、体が休みたいと訴える状態のことです。

「疲労」について詳しく知りたい方は以下の記事をチェックしてみてくださいね。

>>そもそも疲労ってなに?疲労の種類と原因を解説

疲労と栄養素の関係

疲れを取るために、まずはエネルギーの補給が必要です。

体に入ったエネルギーを効率良く利用するためには、ビタミンやミネラルなどの栄養素が欠かせません。
それぞれ働きは違いますが、どれも欠かさず、効率良く摂ることが必要です。

栄養はどのくらい摂る必要があるの?

それでは、栄養はどのくらいとればいいのでしょうか。

目的や栄養の種類により摂取する量は異なります。
厚生労働省が発行している「日本人の食事摂取基準」には、健康な体づくりのための推奨量や目安量が設定されているので参考にしてみてください。

推奨量ほとんどの人が必要な量を満たす量
目安量不足状態の人がほとんどいない量

健康な人が自分に適した栄養素量を摂取しようとする場合、推奨量、または目安量を目指すことが大切です。

ビタミンは疲労の回復に必要!

疲労の回復に大切な栄養素は、大きく分けて4つです。

  1. 水溶性ビタミン
  2. 脂溶性ビタミン
  3. ミネラル
  4. 補酵素

これらの栄養素は、身体的疲労や精神的疲労の回復を助けてくれます。

それぞれの役割をみていきましょう。

①水溶性ビタミン

水に溶けやすい水溶性ビタミンは、食べすぎても尿の中にとけて排出されてしまいます。
毎日摂るとよい栄養素です。

特にビタミンB群は疲労回復に大きな役割を担っています。

水溶性ビタミンはどうしても不足しがちなので、多めに取るように意識しましょう。
疲労の回復に欠かせないビタミンB群については、こちらを参考にしてください。

「疲労回復」に必要なビタミンを薬剤師が解説!

他にもたくさんのビタミンが、疲労回復のお手伝いをしてくれています。

ナイアシン(ビタミンB3)
  • 糖質、脂質、タンパク質の代謝に関わる。
  • 皮膚の機能を保持。
葉酸(ビタミンB9)
  • タンパク質の代謝に関わる。
  • 正常な赤血球を作るのに役立つ。疲れやすく、体がだるい時は貧血が原因かもしれません。
パントテン酸(ビタミンB5)
  • 糖質、脂質、タンパク質の代謝に関わる
ビオチン(ビタミンB7)
  • 糖質、脂質、タンパク質の代謝に関わる
  • 皮膚の機能を保つ
ビタミンC
  • メラニン色素の生成を抑える。
  • 体の免疫力を高める
  • エネルギー産生に関わるカルニチンの生成に役立ちます。
  • 皮膚や血管などを形成するコラーゲンの生成に関わる

②脂溶性ビタミン

脂溶性ビタミンは、必要以上に摂取すると体の中に蓄積する恐れがあります。
そのため、大量摂取による過剰性に注意が必要です。

通常の食事量であれば、心配しなくても大丈夫ですよ。
サプリメントによる大量摂取に注意しましょう。

ビタミンD
  • 骨や歯を丈夫にする
ビタミンA
  • 皮膚や粘膜を丈夫にする
  • 視力の低下を防ぐ
ビタミンK
  • 血液を固まらせ、止血に関わる
  • 骨や歯を丈夫にする
ビタミンE
  • 動脈硬化や老化に関わる過酸化物質の生成を抑える
  • 体の血液の流れを良くし、たまった疲労物質を取り除く
  • ホルモンの分泌を円滑にする

③ミネラル

ミネラルは、疲労回復に対する様々な役割を持ちます。

ビタミンと同様に人の体の中では生み出せないため、食物から摂取する必要があります。

  • 全身に血液を運ぶ。不足すると疲労感や立ちくらみの原因に。
  • 体内でのエネルギー産生に役立つ。
カルシウム
  • 骨や歯の形成に関わり、丈夫にする。
  • 心臓や筋肉の機能に関与。
マグネシウム
  • 骨や歯を構成する成分。
  • 糖質、脂質、タンパク質の代謝に関わる。
  • カルシウムと共に、心臓や筋肉の機能に関与。
  • 体内で様々な酵素反応に関わり、運動後の疲労回復に効果的。

④補酵素

酵素の役割としては、たものを消化・吸収・代謝する働きがあります。

しかし、ほとんどの場合、酵素単体では働くことができません。
そこで、酵素をサポートする成分が「補酵素」です。

疲労の回復には、スムーズな消化・吸収・代謝が欠かせませんね。

α-リポ酸
  • 糖質をエネルギーとして代謝。
  • 抗酸化作用も大きく、肉体の疲労回復に有効。
コエンザイムQ10
  • エネルギーの代謝や抗酸化作用に関わる。

栄養の摂り方のコツ

食事から上手に栄養を摂るには、1日300gの野菜を、そのうち100gは緑黄色野菜を食べることが必要です。

そうすると1日に必要なビタミンも摂取することができますよ。

バランスの良い食事についてはこちらも参考にしてみてください。

納得!「バランスよい食事」と「疲労回復」の関係

また新鮮な食材に含まれるビタミンは、加熱調理や保存により含有量が減ってしまいます。
栄養分をしっかり吸収できる調理法を意識しましょう。

ここでは、栄養素の上手な摂り方を解説します。

①水溶性ビタミン類

水溶性ビタミンは名前の通り、水に溶けやすいビタミンです。
茹でてしまうとビタミンの多くが茹で汁に溶け出してしまいます。

スープとして飲むのであれば、水溶性ビタミンを余すことなく摂ることができます。
ゆで汁を捨ててしまう場合は電子レンジで加熱したり、蒸す方法がおすすめです。

水溶性ビタミンを多く含む食材と、推奨量(又は目安量)をひとつの食品で摂取する場合の目安を以下にまとめました。

ビタミンB1豚ヒレ(143g・ヒレカツ約1.5枚)

大豆(1.5カップ)

ビタミンB2牛レバー(55g)

鶏卵(中7個)、

ビタミンB6さんま(約2.5尾)

バナナ(3本)、玄米ご飯(茶碗1杯)

ビタミンB12牡蠣(4~5個)、サバ、ホタテ、ホッケ(100g)

あさり(1個)

ナイアシン(ビタミンB3)たらこ(40g)

まぐろ(刺身5〜6切れ)

葉酸(ビタミンB9)牛レバー(25g)、ほうれん草(2/3束)
パントテン酸(ビタミンB5)鶏レバー(約70g)

納豆(3パック)

ビオチン(ビタミンB7)カレイ(2尾)、大豆(1/1/4カップ)
ビタミンCじゃがいも(中サイズ約2個)、レモン(約1個)

②脂溶性ビタミン類

脂溶性ビタミンは、油にとけやすく、水に溶けにくい性質をもっています。

油で炒めたり、揚げ物の調理法がおすすめです。
サラダにして、ドレッシングとあえるのも良いですね。

ビタミンが油に溶け出し、吸収がぐんとアップします。

脂溶性ビタミンを多く含む食材と、推奨量(又は目安量)をひとつの食品で摂取する場合の目安を以下にまとめました。

ビタミンD干し椎茸(大4〜5枚)、ちりめんじゃこ(大さじ約2杯)
ビタミンAうなぎの蒲焼(1/2尾)、にんじん(3/4本)
ビタミンK納豆(1/2パック)、ほうれん草(1/3束)
ビタミンEべに花油(大さじ2杯)、アーモンド(15粒)

③ミネラル

ミネラルはビタミン同様、体内では作り出すことができないため、日々の食事で積極的に摂る必要があります。

カルシウム木綿豆腐(1・4/5)、牛乳(575ml)
マグネシウムそば(4.5玉)、乾燥わかめ(約30g)

④補酵素

補酵素の1日の摂取目安量は100~200mgです。

食事に含まれる補酵素は微量であり、1日100mgを目安に摂取しようとすると、ほうれん草では約400kg近く摂取しなければいけません。

補酵素を含む食品の一覧は以下になります。

α-リポ酸レバー、ほうれん草、ブロッコリー、トマト
コエンザイムQ10イワシ、サバ、牛肉

補酵素を含む食品を、普段の食事に取り入れるのはおすすめしますが、食事からだけで補うのはとても大変です。
場合によってはサプリメントとの併用をおすすめします。

栄養素を効率よく摂って、疲れ知らずの体になろう!

栄養素は摂りすぎも、摂らなさすぎも良くありません。

毎日のことなので「バランスの良い食事」は特に気をつけたいですよね。

また、栄養素は組み合わせることで、疲労回復の効果がアップします。

栄養たっぷりの食事で疲れを癒しましょう。

 

 

【参照】

厚生労働省 日本人の食事摂取基準

東京医科大学 公衆衛生学分野 「疲労回復のヒント」

株式会社明治 栄養素のはたらき

森永製菓 ビタミンB群のはたらき

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