編集
医療ライター
薬剤師 森本夏子
「ストレスが続いて胃が痛い」
「疲れると胸焼けがする」
その症状、もしかして慢性胃炎かもしれません。
慢性胃炎とは上部消化管検査・組織学検査で胃粘膜に長期的な炎症が認められる疾患です。
主な原因としてピロリ菌感染が主な要因であると言われています。
この記事では慢性胃炎の原因や症状、効果的な漢方について説明。
胃の痛みが気になる人はぜひ読んでみてください。
慢性胃炎の原因について解説
慢性胃炎とは胃の粘膜が慢性的に炎症を起こした状態をいいます。
原因としては大半がピロリ菌の感染によるものと考えられていますが、薬によっても慢性胃炎を引き起こす場合があります。
ここでは慢性胃炎の2つの原因について解説します。
ピロリ菌が原因
ピロリ菌について聞いたことがある人は多いと思います。[1][2]
ピロリ菌は慢性胃炎だけでなく、胃潰瘍や胃がんの原因の一つです。
通常の細菌は胃酸により死んでしまいますが、ピロリ菌は胃酸のなかでも生き残ることができます。
ピロリ菌は胃の中にある尿素を二酸化炭素とアンモニアに分解します。
分解されたアンモニアがピロリ菌の周りの酸を中和することで、ピロリ菌は胃酸でも生き残ることが可能です。
多くは子供の頃にピロリ菌に感染しています。
ピロリ菌は一度感染すると、除菌しない限り胃の中にいることが特徴です。
しかしピロリ菌に感染したからといって、必ずしも胃潰瘍や胃がんになるわけではありません。
ピロリ菌によって慢性胃炎が続き、胃の防御機能が落ちてしまう状態が危険です。
胃がストレスや塩分の多い食事などの攻撃因子に弱くなり、胃潰瘍や胃がんにつながります。
まずは慢性胃炎への対策が重要ですね。
薬によっても慢性胃炎になる
ピロリ菌の他に、薬剤性による慢性胃炎もあります。
特にNSAIDsと呼ばれる非ステロイド性抗炎症薬が原因です。[3]
身近な薬の成分でいうと
- アスピリン
- イブプロフェン
- ロキソプロフェン
- エテンザミド
- アセトアミノフェン
- ジクロフェナク など
医師から処方される薬もありますが、OTCとしてドラッグストアで購入することも可能です。
薬剤性の慢性胃炎はNSAIDsのシクロオキシゲナーゼ(COX)阻害作用によるものです。
痛み止めのNSAIDsがCOXという酵素を阻害することで、炎症作用を起こすプロスタグランジン類の合成を抑制します。
プロスタグランジンの中でも、特にプロスタグランジンE2(PGE2)は起炎物質・発痛増強物質です。
NSAIDsは主にPGE2の合成抑制によって鎮痛・解熱・抗炎症作用を発揮します。
NSAIDsによって阻害されるCOXにはサブタイプがあり、COX-1とCOX-2です。
COX-1を阻害することで、胃の粘膜にあるプロスタグランジンのPGE2やPGI2の働きを抑え、胃粘液の分泌が少なくなり胃の守りが弱くなってしまいます。
選択的にCOX-2を阻害するNSAIDsの方が、胃腸障害の副作用は少なくなります。[3]
頭痛や生理痛などにより、市販の痛み止めを頻用する人は注意が必要です。
痛み止めは、飲めば飲むほど良い薬ではありません。
用法用量をきちんと守って服用するようにしましょう。
胃が弱い人は、胃薬を一緒に服用することも予防につながる一つの方法です。
慢性胃炎につながる攻撃因子とは
ピロリ菌の感染や、NSAIDsの服用によって胃の防御が弱い状態に陥ります。
ここに攻撃因子が胃を攻撃することで慢性胃炎へつながります。
胃を守る胃粘膜の防御因子は以下です。
- 胃粘液
- 胃粘膜の抵抗力
- 胃粘膜の血流
これらの防御因子は、ストレスや発がん性物質、塩分の多い食事などによって低下。
弱ったところに、胃酸やタンパク質を分解するペプシンという酵素、ストレスなどが胃を攻撃することで慢性胃炎になります。
慢性胃炎の症状
慢性胃炎とはどのような症状でしょうか。
症状は人によりさまざまです。
- 食欲不振
- 悪心
- 嘔吐
- 心窩部のつかえ・痛み
- 胸焼け
- 膨満感 など
また、必ずしも検査で胃に炎症があるなどの器質的な異常が見られないにもかかわらず、不定愁訴がある、症候学的胃炎というものも多いです。
漢方薬はこのような不定愁訴に対して幅広く適用が可能です。
慢性胃炎で利用される漢方薬
ここでは慢性胃炎でよく利用される漢方薬について解説します。
- 六君子湯(りっくんしとう)
- 半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)
それぞれ見ていきましょう。
六君子湯
- 効能効果:胃炎、胃腸虚弱、胃下垂、消化不良など
漢方薬は生薬由来の薬なので、実際に効能効果が証明されている研究は貴重です。
その中でも六君子湯は、消化管運動の改善や胃粘膜血流増加など多くの薬理作用が実験的に明らかになっています。[4]
六君子湯は食べるとすぐに眠くなり、体のだるさがなかなか取れない人や胃腸の弱い人におすすめ。
副作用も少なく、広く色んな人に適応可能な漢方処方です。
半夏瀉心湯
- 効能効果:急・慢性胃腸炎、下痢・軟便、消化不良、胃下垂、神経性胃炎、胃弱、二日酔、げっぷ、胸やけ、口内炎、神経症
半夏瀉心湯は主にストレスによる胃腸障害を改善します。
特に以下の症状がある方におすすめの漢方処方です。
- 神経過敏な方
- お腹がゴロゴロとなる方
- 胃痛が気になる方
- 口内炎がある方
また半夏瀉心湯は胃痛だけでなく、抗がん剤治療による副作用の一つである口内炎に対して効果の研究が行われています。[4]
そして実際に臨床の場でも用いられている漢方処方です。
慢性胃炎が気になる方は漢方を試してみましょう
慢性胃炎について解説しました。
原因はピロリ菌の感染やNSAIDsの服用により胃が弱くなることです。
弱くなった胃に攻撃因子が胃を攻撃し慢性胃炎につながります。
ピロリ菌感染が原因の場合は除菌が必要になるので、早めに専門医に受診しましょう。
漢方は胃腸の運動が弱っている時やストレスに対しての胃の痛み、また器質的な症状がない場合の胃炎への効果が期待できます。
+kampoではあなたの体調に合わせて漢方をお届けします。
気になる方は一度試してはいかがでしょうか?
【参考】
[1]ピロリ菌について
[2]ピロリ菌のお話