「最近疲れが溜まる。」「なかなか疲れが取れない。」と感じませんか。
そもそも、疲れ(=疲労)とは、どのような状態なのでしょうか。
疲労は以下のように定義されます。
疲労とは過度の肉体的および精神的活動、または疾病によって生じた独特の不快感と休養の願望を伴う身体の活動能力の減退状態である。
引用:日本疲労学会
つまり身体ストレスや精神的ストレス、病気からのストレスにより、いつも通りの調子ができず普段通りの活動できない。
体が休みたいと訴える状態であると言い換えることができます。
また医療の世界では、未病の最終的な状態と考えられています。
未病とは発病にはならないものの軽い症状がある状態のことです。
なかなか回復しない疲労は、様々な病気につながる原因と考えられています。
この記事では疲労に関して以下の内容を解説。
- 疲労の種類
- 疲労の原因
疲れが溜まっている人にぜひ読んでいただきたい内容です。
疲労の種類は2種類

疲労は継続する期間により、2つにわけられます。
- 急性疲労
- 慢性疲労
では、それぞれ解説していきましょう。
急性疲労は一過性
急性疲労とは、一過性の疲労であり、疲れても休めば回復する疲労のことです。
いつもより強度の強い運動や重い物を運ぶ、急激な運動などの一過性の行動が原因と考えられます。
一日寝るとすっきりすることが多いです。
比較的、短期間でとれる疲れです。
慢性疲労は蓄積する疲れ
慢性疲労とは長期間にわたり倦怠感や不快感を伴い、疲労が蓄積してしまう状態のことです。
休息や睡眠だけでは、なかなか改善されません。
また回復しない疲労は、病気によって引き起こされていることもあります。
なかなか疲労が回復しない場合は検査することをおすすめします。
慢性疲労の原因が病気によるのであれば、その病気を治すことが重要になります。
疲労の原因と考えられる3つの物質

疲労は様々な身体活動やストレス、環境要因などが原因と考えられます。
この章では、疲労の根本の原因について解説します。
- 活性酸素
- 乳酸
- 紫外線
疲労と活性酸素の関係
疲労は根本のところで「活性酸素」が関わっています。[1][2]
地球上のほとんどの生命体は、エネルギーを作る際に酸素が必要です。
酸素を使ってのエネルギー産生の過程では、必然的に副産物として活性酸素が発生します。
活性酸素は微量であれば、私たちの体内で細胞伝達物質や免疫機能として有用な働きを行いますが、過剰に溜まってしまうことで疲れの原因になります。
活性酸素が体のなかでうまく処理されずに、過剰に溜まってしまうと起こるのが、タンパク質や脂質などの酸化です。
タンパク質や脂質の酸化により、酸化タンパクや過酸化脂質が蓄積することで、がんや老化・動脈硬化などを引き起こす原因となってしまいます。[3]
また活性酸素の産生が過剰になり、バランスを崩れた状態を「酸化ストレス」と呼びます。
私たちの体は過度な運動や長時間のデスクワークなどのオーバーワークによって、細胞が大量の酸素を消費します。
その結果、活性酸素と呼ばれる酸素を含む化合物が発生し酸化ストレスにつながります。
他にも以下の要因により、酸化ストレスを引き起こします。
- 紫外線
- 放射線
- 大気汚染
- タバコ
- 酸化された物質の摂取 など
活性酸素は、細胞そのものや細胞の中の重要な器官を酸化することで、細胞や器官を傷つけてしまいます。
結果、免疫細胞が細胞の傷害を見つけ、脳に異常を伝える事で人は疲れを感じるのです。
また以下の習慣が、酸化ストレスを防止するのに重要と考えられています。
- バランスの良い食事習慣
- 適度な運動習慣
- 十分な睡眠 など
活性酸素による酸化ストレスを蓄積しないためにも、毎日の習慣を整えましょう。
乳酸は疲労原因物質なのか?
乳酸は激しい筋肉運動によって発生し、筋肉内や血液中に溜まると疲労の原因になると考えられていました。
しかし近年の研究により、乳酸は疲労を起こす原因物質ではなく、むしろ疲労回復に役立つ重要な分子であると考えられています。
疲労の原因でない理由は、乳酸の増加は一過性で、過労の時間経過とは合わず、疲労の程度にかかわらず血液中で上昇するからです。
さらに、乳酸を動物に投与しても疲労状態にならないことが実験でも明らかになっています。
また筋肉においての乳酸の蓄積は筋肉活動の妨げではなく、むしろ筋肉活動の促進・保護作用を持つことが明らかになりました。
かつて疲労原因物質だと言われていた乳酸は、むしろ疲労回復に役立つ重要な分子であると考えられています。
紫外線と疲労の関係
紫外線も疲労に関係があると考えられています。
紫外線にはいくつかの種類があり、疲労に関係しているのはUVAとUVBです。
目から体内に入り込んだUVBは三叉神経を介して、UVAは視神経を介して脳へ信号を送り脳下垂体を刺激します。
脳下垂体は刺激されることで様々なのホルモンを産生したり分泌したりします。
その結果、肌や内臓の黒化や、免疫病態や疲労状態を起こしてしまうのです。
紫外線が目から入るのを防ぐために、紫外線量が多い時期や時間帯はサングラスをするなどの対策をしてみましょう。
疲労回復!抗酸化物質のはたらき

体を酸化している状態にする活性酸素を消去するのに必要なのが、抗酸化物質です。
抗酸化物質は、疲労の原因のひとつである活性酸素を消去し、細胞の健康を保つ機能があります。
活性酸素が発生した場合は、より多くの抗酸化物質を消費することで、私たちの体内の活性酸素が処理されます。
よって体内の抗酸化物質が少なくなると活性酸素の量が増えてしまうのです。
細胞が若く健全であれば、グルタチオンやアスコルビン酸(ビタミンC)などの抗酸化物質が有効的です。
抗酸化物質により活性酸素を速やかに処理することができます。
体内で合成される、抗酸化物質のほかに食事などで摂れる抗酸化物質もあります。
近年注目されているのが以下の2つです。
- ポリフェノール
- カロテノイド
ポリフェノールには以下の物質が例として挙げられます。
- ブルーベリーなどに含まれるアントシアニン
- 大豆に含まれるイソフラボン
- ゴマの成分からできるセサミノール
- そばに含まれるルチン
- 緑茶に含まれるカテキン
- 紅茶・ウーロン茶に含まれるタンニン
またカロテノイドはトマトなどの緑黄色野菜や果物に含まれる、β-カロテンやリコピンが有名です。
カニやエビなどの甲殻類、サケ、マスに含まれるアスタキサンチンも抗酸化作用があります。
なかなか疲れがとれない場合は、抗酸化作用のある食材を選ぶことをおすすめします。
疲労の原因を知ってすっきりした毎日を送ろう

疲労に関してこの記事では解説しました。
疲労には急性疲労と慢性疲労の2種類があります。
まずは自分の疲れが急性なのか、慢性なのかを知りましょう。
そして疲労の主な原因は、活性酸素や紫外線であることを説明しました。
活性酸素は微量であれば体にとって有用ですが、蓄積することで体を酸化させ疲れの原因となってしまいます。
疲労の原因を取り除くために、
- 活性酸素を蓄積させない生活習慣
- 活性酸素を消去する働きのある抗酸化物質を普段の食生活に取り入れる
などの工夫をして疲労を溜めない習慣作りを心がけましょう。


【参照】
渡辺 恭良, 水野 敬 「おもしろサイエンス疲労と回復の科学」