六君子湯を夏の食欲不振・胃の痛み・胃もたれにプラス

rikkunshito-kampo漢方

記事監修

+kampo(プラス漢方) 笹森有起
オフィス薬局 管理薬剤師

「暑くて食欲がなかなかでない」
「だるくて胃の調子が悪い」

夏バテによる食欲不振や胃の痛み・胃もたれは、経験したことがある人も多いのではないでしょうか。

今回は、胃腸の症状に効果的な漢方薬「六君子湯(リックンシトウ)」に関して薬剤師が解説。

自然由来の生薬を使用した漢方薬を服用することで、毎年の夏バテの改善にもつながります。
漢方薬を普段の生活に+プラスしてみませんか。

胃腸の調子はどうですか?

今回は夏バテによる食欲が減ってしまう「食欲不振」と、現代人に多く見られる「胃の痛み・胃もたれ」に関して紹介します。

夏バテで食欲がなくなる人は約22%

大手調剤薬局である日本調剤の調査によると、夏バテによる不調トップ5は以下のような結果が明らかになりました。[1]

1位疲れやすい48.0%
2位体がだるい・重い45.8%
3位食欲がなくなる21.9%
4位眠れない・睡眠不足20.6%
5位無気力になる20.2%

夏バテで食欲がなくなる人は21.9%と、3位にランクインしています。

また夏の暑さに弱いと答えた人は、全体の47.7%でした。
夏の暑さに強いと答えた人は全体の27.8%だったので、多くの人が夏の暑さには弱いことが判明。

夏バテがひどくなると、脱水症状や熱中症につながり危険です。
食欲が夏バテにより減少することで、食事が摂れず体力が落ち、慢性疲労につながるので注意しましょう。

胃の痛み・胃もたれは現代病

現代人に多い、胃の痛みや胃もたれ。
テレビCMでも胃腸薬の宣伝を多く目にします。

胃の痛みや胃もたれの原因はさまざまです。

  • がん
  • 胃潰瘍
  • ディスペシア
  • 加齢
  • ストレス
  • 暴飲暴食 など

基本的な疾患があるものから、生活習慣によるものまで色々な原因があります。

2020年10月にヒューマン・データ・ラボラトリ株式会社が行った、全国の男女2,000名を対象にアンケート調査では、胃の不調を訴える人は41.3%でした。[2]

男女別の結果では、男性の39.8%に対して女性は42.8%。
年代別の結果は、男性は20代が最も多く、女性は30代が多い結果でした。

比較的に若い世代で胃の不調を訴える人が多いことが分かります。

また胃の不調を感じた人のほとんどが、コロナ禍前よりも胃の疲れ具合が重くなっていることが判明。

原因としては、コロナ禍におけるが外出自粛やリモートワーク、感染への不安などストレスが関与していると考えられます。

現代病といえるほど、胃の不調を訴える人の数が増えています。

ただし胃の不調の原因がストレス以外にあり、他の疾患から来ているものであれば早めの治療が重要です。
胃の痛みや胃もたれが毎日のように続くのであれば、早めに病院を受診しましょう。

胃腸症状の一般的な改善方法・治療法

夏バテによる食欲不振や胃の痛み・胃もたれなど、胃腸の症状に対する改善方法や治療方法を紹介します。

基本的に治療になると、西洋薬とも言われる一般的な薬が処方されます。
また、ドラッグストアや薬局で購入できる市販薬でも症状を改善することが可能。

しかし、症状が長引いたり悪化したりする場合は、早めに医師の診察を受けるようにしましょう。

夏バテによる食欲不振は生活習慣を見直す

夏バテには以下の3つのバランスが重要です。

  • 食事
  • 運動
  • 睡眠

3つのバランスが崩れると自律神経のバランスも崩れてしまい、夏バテを克服できないどころか、さらに体調不良に陥ってしまいます。

夏バテで食欲がないからといって食べないのではなく、さっぱりした食事を選びましょう。

夏野菜と呼ばれる夏が旬の野菜は水分が豊富なので、脱水症状の予防にもなります。

またタンパク質を積極的に摂るようにしましょう。
タンパク質は、筋肉の疲労を回復したり体力を温存したりなどの効果があります。

食事による疲労回復に関しては「納得!「バランスよい食事」と「疲労回復」の関係」の記事で詳しく解説しています。

また漢方による睡眠による疲労回復に関しては「自然由来の成分を使った漢方薬で自然な眠りを」の記事をお読みください。

胃の痛みや胃のもたれ

胃の痛みや胃のもたれに対しての薬は総称して「胃薬」と呼びます。
ドラッグストアなどで購入できる市販薬であったり、医師から処方される処方薬であったりさまざまです。

自分にあった胃薬を見つけることも大切ですが、その裏に疾患が隠れていることもあります。
薬を服用しても良くならない場合や悪化する場合は、早めに医師の診察を受けましょう。

市販薬の胃薬

ドラッグストアなどで購入できる市販薬には以下の種類があります。

胃酸の分泌を抑えるH2ブロッカー

M1ブロッカー

刺激になる胃酸を弱める胃酸中和剤
胃の粘膜を保護する胃粘膜保護剤
胃の緊張を和らげる鎮痛鎮痙剤
消化を助ける消化酵素
弱った胃の働きを回復する健胃薬

胃酸の分泌を抑える、H2ブロッカーとM1ブロッカーは第一類、第二類の市販薬に分類されます。

第一類は薬剤師による指導、販売が必要です。
市販薬でまず対応したい場合には、薬剤師に相談してみましょう。

医師から処方される胃薬

医師の診断により処方される胃薬は、市販薬と同じ成分のものもあれば、市販薬より強力なものもあります。

基本的には、胃酸の分泌を抑える薬と消化管の運動機能を改善する薬です。
医師による処方になると、症状を和らげるだけでなく、治療という観点から薬が選ばれます。

例えば、機能性ディスペプシアであれば、消化を助ける薬と胃酸を抑える薬が第一選択薬です。

胃酸を抑える薬

H2ブロッカー
  • ロキサチジン
  • ファモチジン
  • シメチジン
  • ラフチジン
  • ニザチジン など
プロトンポンプ阻害薬(PPI)
  • オメプラゾール
  • ランソプラゾール
  • ラベプラゾール
  • エソメプラゾールなど

PPIは、胃酸の分泌を抑えることで逆流性食道炎の治療にも用いられ、通常H2ブロッカーよりも胃酸分泌さの作用が強いと考えられています。

消化管の運動機能を改善する薬

アセチルコリン作動薬
  • アクトラニウム
  • 塩化カルニチン
ドパミン受容体拮抗薬
  • メトクロプラミド
  • ドンペリドン
  • イトプリド
  • スルピリド
選択的セロトニン5-HT4受容体作動薬
  • モサプリド
オピオイド作動薬
  • トリメブチン

参考:メディカルオンライン[3]

六君子湯(リックンシトウ)での治療

この章では、六君子湯(リックンシトウ)の以下の内容に関して解説します。

  1. 効能効果
  2. 配合生薬
  3. 特徴

順番にみていきましょう。

①六君子湯の効能効果

六君子湯の効能効果は以下です。

体力中等度以下で、胃腸が弱く、食欲がなく、みぞおちがつかえ、疲れやすく、貧血性で手足が冷えやすいものの次の諸症:胃炎、胃腸虚弱、胃下垂、消化不良、食欲不振、胃痛、嘔吐

引用:ツムラ 六君子湯

②六君子湯の配合生薬

六君子湯を構成する生薬は以下の8種類です。

  • 人参(ニンジン)
  • 蒼朮(ソウジュツ)
  • 茯苓(ブクリョウ)
  • 半夏(ハンゲ)
  • 陳皮(チンピ)
  • 大棗(タイソウ)
  • 甘草(カンゾウ)
  • 生姜(ショウキョウ)

漢方処方としては、胃腸の働きを改善する「四君子湯(シクンシトウ)」に、胃の中の「水(すい)」の停滞を改善する「二陳湯(ニチントウ)」を加えています。

③六君子湯の特徴

六君子湯は漢方医学で考えられる「虚証(きょしょう)」の状態に効果的です。
虚証とは、本来の生命力が弱ってしまうことで体の機能が低下した状態を指します。

六君子湯は胃腸の薬ですが、胃の症状に追加して以下の症状がある人に特に効果的です。[4]

  • やせ型
  • 顔色が悪い
  • 冷えやすい
  • みぞおちのつかえがある
  • 全身倦怠感のある人

六君子湯は、漢方医学でいう「水(すい)」の停滞を改善する生薬が入っていることが特徴です。

夏バテによって、体の中の水分バランスが崩れてしまいます。
つまり六君子湯によって、夏バテで崩れた体内の水(すい)のバランスを整えることが可能です。

体の水(すい)の停滞を改善する六君子湯は、夏バテによる食欲不振などの胃腸障害や、胃の痛み、胃のもたれに効果的なことが分かります。

自然由来の漢方薬「六君子湯」プラスして胃腸をスッキリ

六君子湯(リックンシトウ)は夏バテによる食欲不振、胃の痛み、胃のもたれに効果的な漢方薬です。

漢方薬は西洋薬と違って副作用がでにくく、また自然由来の生薬で体質改善につながる薬です。

毎日の習慣に漢方を+(プラス)してみてはいかがでしょうか?

 

【参考】

[1]日本調剤・自主企画調査『夏バテや熱中症 夏の体調管理に対する意識』

[2]プレスリリース ヒューマン・データ・ラボラトリ株式会社

[3]メディカルオンライン

[4]ツムラ六君子湯

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