疲れ・胃もたれ・ゴロゴロおなかに!3つの症状に即効性の漢方薬

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記事監修

+kampo(プラス漢方) 笹森有起
オフィス薬局 管理薬剤師

「最近、疲れやすくなった」
「食事のあとは胃がもたれる」
「緊張すると、おなかがゴロゴロと鳴って恥ずかしい」

日常の中で感じている、これらのお悩み解決に漢方という方法があります。
体質から改善する漢方は、複数の症状が重なっている方にぴったりです。

古くから伝えられている生薬の組み合わせによって、漢方はさまざまな不調を取り除きます。
また、漢方は効き始めに時間がかかるイメージがありますが、種類によっては即効性のものも。

今回の記事では以下について解説しています。

  • 疲れを感じやすい方には補中益気湯(ホチュウエッキトウ)
  • 食後に胃がもたれる方には六君子湯(リックンシトウ)
  • 静かなシーンでおなかがゴロゴロ鳴ってしまう方には半夏瀉心湯(ハンゲシャシントウ)

自分の体質に合った漢方を見つけて、日々の困りごとを解消しましょう。

1.体力に自信がない方には補中益気湯がおすすめ

次の症状がある方には補中益気湯(ホチュウエッキトウ)が有効です。

  • 体がだるい
  • 動くのがつらい
  • すぐに疲れてしまう

多くの診療科で処方される機会も多い、補中益気湯の特徴について解説します。

疲れは「気」が足りていない状態

ぐったり感を感じるときは、「気」を補い、「気」の巡りを良くする生薬を体に取り入れると効果的です。

東洋医学では「気・血・水」のバランスが整っている状態を健康であると考えています。
特に疲労がたまり、疲れやすくなっているときは「気」が不足しているとされています。

疲れの原因は人それぞれです。
原因別の疲労回復法についてはこちらの記事で解説しています。

発見!疲労の原因を見つけて回復する方法へ

補中益気湯には「気」を高める生薬が含まれている

補中益気湯には活力をよみがえらせる生薬が多く含まれています。[1]

人参(ニンジン)気を補って胃腸を助ける
蒼朮(ソウジュツ)気を補って胃腸を助ける
黄耆(オウギ)気を守る
当帰(トウキ)血を補って、巡りをよくする
陳皮(チンピ)気を補って、胃腸を助ける
大棗(タイソウ)気を補って、胃腸を助ける
柴胡(サイコ)気を持ち上げて、緊張や活力を回復させる
甘草(カンゾウ)気を補って、胃腸を助ける
生姜(ショウキョウ)気を補って、胃腸を助ける
升麻(ショウマ)気を持ち上げて、緊張や活力を回復させる

補中益気湯に含まれる人参は高麗人参とも呼ばれています。
高麗人参はウコギ科のオタネニンジンで、普段食べられているセリ科のニンジンではありません。

生薬の人参は滋養強壮作用があり、体力が低下した方向けの漢方によく含まれています。

補中益気湯で元気を補う

補中益気湯の効能効果は次の通りです。[2]

胃腸が弱く、だるさを感じやすい人の次の症状
  • 病気の後の体力低下
  • 食欲不振
  • 胃下垂
  • 風邪 など

参照元:ツムラ補中益気湯添付文書

補中益気湯には「気」を高める生薬が多く含まれており、慢性疲労や病気の後の体力低下の方にぴったりの漢方。
免疫細胞に対して働き、インフルエンザや風邪の予防にも効果的です。

また、補中益気湯の有効性については多くの論文で発表されています。

補中益気湯の疲労回復の作用については、こちらの記事でご紹介しています。
薬剤師が解説!補中益気湯は疲労回復に有効?

疲労回復の目的で栄養ドリンク剤やサプリメントを頻繁に摂取している方は、補中益気湯を試してみるのはいかがでしょうか。

 2.食後に胃がもたれる方には六君子湯が効果的

つい食べすぎた後、胃がもたれてつらいという方におすすめなのが六君子湯(リックンシトウ)です。

胃に優しい生薬からできた六君子湯は、胃腸の働きを高める作用があります。

胃もたれの原因は胃に残った食べ物

食べ過ぎ、飲み過ぎは胃もたれを招きます。

胃に過剰な負担がかかると、胃腸の働きが鈍くなります。
胃腸の動きが滞った結果、食べ物が胃に残り消化不良を起こすことが胃もたれの原因です。
暴飲暴食だけでなく、もともと食が細い方や胃腸が弱い方も胃もたれリスクに注意しましょう。

精神的な理由で胃の不調が起こりやすい方は、こちらの記事を参考にしてください。
ストレスが胃にくる人は注意!慢性胃炎とは?

2種類の胃腸薬を組み合わせた漢方薬・六君子湯

六君子湯は、「気」を補い胃腸の働きを良くする生薬で構成されています。[3]

人参(ニンジン)気を補い、胃腸機能を高める
蒼朮(ソウジュツ)気を補い、胃腸機能を高める
茯苓(ブクリョウ)気を補い、胃腸機能を高める
大棗(タイソウ)気を補い、胃腸機能を高める
甘草(カンゾウ)気を補い、胃腸機能を高める
生姜(ショウキョウ)気を補い、胃腸機能を高める
半夏(ハンゲ)胃腸の動きをより良くする
陳皮(チンピ)胃腸の動きをより良くする

六君子湯は胃腸の働きを良くする「四君子湯(シクンシトウ)」と、胃の中の「水(すい)」の停滞を改善する「二陳湯(ニチントウ)」を組み合わせた漢方です。

2種類の胃腸薬を組み合わせることで、より効果的に胃腸の症状を改善できます。

六君子湯は現代人の胃の悩みにぴったり

六君子湯の効能効果は次の通りです。[4]

胃腸が弱く、疲れやすくて、手足が冷えやすい人の次の症状
  • 胃炎
  • 胃アトニー
  • 胃下垂
  • 消化不良
  • 食欲不振
  • 胃痛
  • 吐き気 など

参照元:ツムラ六君子湯添付文書

 六君子湯は胃もたれのほか、以下の症状や疾患に効果が認められています。

  • 食欲が出ない時
  • 胃下垂
  • 機能性ディスペプシア(FD)

幅広い胃腸の不調を和らげる六君子湯は、まさしく現代人向けの胃腸薬と言えます。

3.おなかがゴロゴロする方には半夏瀉心湯が有効

静かな時におなかがゴロゴロと鳴って恥ずかしい思いをすることはありませんか?
ゴロゴロという音は極度の緊張から起こっている可能性も。

半夏瀉心湯(ハンゲシャシントウ)はストレス性の胃腸症状を和らげる漢方です。

精神的なことが原因でおなかがゴロゴロ鳴ることも

心身にストレスがかかると、自律神経が乱れて胃腸の働きに影響が出ることがあります。
人によっては下痢になったり、反対に便秘になったりと悩みの原因に。

腸が過剰に動くと、ゴロゴロという音が鳴ることもあります。

こまめにストレスを解消して、気分転換する方法についてはこちらの記事でご紹介しています。
気が乗らない時に試したい!モヤモヤを解消させる対処法7選

半夏瀉心湯は胃腸の動きを整え、「気」の巡りを良くすることでストレス性のゴロゴロおなかを改善します。

半夏瀉心湯はストレスによる症状を和らげる

半夏瀉心湯には次の生薬が含まれています。[5]

半夏(ハンゲ)気を巡らせ、制吐・胃腸の動きを促す
黄芩(オウゴン)熱を冷ます、鎮静
乾姜(カンキョウ)温める
人参(ニンジン)気を補い、胃腸機能を高める
甘草(カンゾウ)気を補い、胃腸機能を高める
大棗(タイソウ)気を補い、胃腸機能を高める
黄連(オウレン)熱を冷ます、鎮静

半夏瀉心湯の「瀉心」とはみぞおちのつかえを取り去るという意味です。

半夏がおなかの動きを整え、ほかの生薬が「気」の巡りを良くすることで、ストレスによる胃腸の悩みを改善します。

さまざまな胃腸の不調に半夏瀉心湯

半夏瀉心湯の効能効果は次の通りです。[6]

みぞおちがつかえ、お腹が鳴り下痢気味の人の次の症状
  • 下痢
  • 消化不良
  • 胃下垂、
  • 神経性胃炎
  • 二日酔い
  • 胸やけ
  • 口内炎 など

参照元:ツムラ半夏瀉心湯添付文書

半夏瀉心湯は消化管全体の調子を整えるため、下痢や胸やけのほか、口に出来た口内炎にも有効です。

ストレスを感じると、おなかに不調が出やすい方には半夏瀉心湯がおすすめです。

疲れ・胃もたれ・ゴロゴロおなか。症状に合った漢方薬で悩み解消

今回の記事では以下について解説しました。

  • 疲労回復には補中益気湯
  • 食後の胃もたれには六君子湯
  • ストレスでおなかがゴロゴロ鳴る方には半夏瀉心湯

疲れやストレスがたまって、さまざまな症状が出ている時は体の調子を整える漢方薬が効果的です。
漢方薬は効果が現れるまでに時間がかかると思われがちですが、すぐに効き目が出始めるものもあります。

自分の症状や体質に合った漢方薬を選んで、不快な症状を和らげましょう。

 

 

【参照】

[1]補中益気湯: ツムラの漢方処方解説

[2]独立行政法人医薬品医療機器総合機構 ツムラ補中益気湯エキス顆粒

[3]六君子湯: ツムラの漢方処方解説

[4]独立行政法人医薬品医療機器総合機構 ツムラ六君子湯エキス顆粒

[5]半夏瀉心湯: ツムラの漢方処方解説

[6]独立行政法人医薬品医療機器総合機構 ツムラ半夏瀉心湯エキス顆粒

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