梅雨や気圧による体調不良におすすめの漢方薬を紹介

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記事監修

+kampo(プラス漢方) 笹森有起
オフィス薬局 管理薬剤師

「梅雨になると、頭痛がつらい…」
「毎年6月ごろは、体がだるい日が続く」

毎年、梅雨のシーズンに、頭痛など体の不調を感じていませんか?

暑い夏を前に、農作物に必要な雨を降らせる梅雨。
梅雨のジメジメした天候が原因で、体調を崩す人が多いことがわかっています。

今回の記事では、以下を中心に解説します。

  • 梅雨の体調不良の症状
  • 梅雨の体調不良の原因
  • 梅雨の体調不良におすすめの漢方

自分に合った漢方薬を見つけて、憂鬱な梅雨の時期をすっきり乗り越えましょう。

梅雨に体調が悪くなるのは本当?

「梅雨になると体調を崩す」とよく聞きますが、実際どのぐらいの割合でいるのでしょうか?

梅雨時期に体調不良を経験したことがある?

健康解説動画チャンネル「からだプラン」の運営、現役医学生向けの個別指導塾「医学生道場」の運営を手がける株式会社リーフェが、20~50代男女100名に調査を行いました。

3人に1人が梅雨時期に体調不良を経験
特に50代女性は7割が梅雨の体調不良を経験したと判明。
男性では、40代がもっとも多く年齢も関係していることがうかがえる。

梅雨の不調で最も多いのはダントツ頭痛で6割以上
次いで、倦怠感(40.6%)、疲れ(37.5%)。
20代男性は寝不足・立ちくらみが全員に該当した。
30代女性はメンタル面(イライラ)が6割を超え、全性年代で最も多くなった。

引用:【調査レポート】約3人に1人は「梅雨バテ」経験あり。梅雨の頭痛、イライラ、寝不足…原因は脱水にあり?!~代表取締役医師が解説~株式会社リーフェ

3人に1人と、かなり多くの方が、「梅雨時期に体調を崩しやすい」と答えていることがわかりました。

梅雨の体調不良はどんな症状?

同じく株式会社リーフェの調査で、梅雨時期に起こる不調はどのようなものがあるか、症状別の結果が出ています。

引用:【調査レポート】約3人に1人は「梅雨バテ」経験あり。梅雨の頭痛、イライラ、寝不足…原因は脱水にあり?!~代表取締役医師が解説~株式会社リーフェ

この調査結果によると、頭痛が65.6%と最も多く、倦怠感40.6%、疲れ37.5%が続いています。
めまいや胃腸の不調も多い印象です。

また、むくみや関節の痛みが出る方もいます。[1]

なぜ梅雨に体調が悪くなるのか

梅雨の気候の何が、体調不良をもたらす原因になっているのでしょうか?

体調不良は梅雨の気候が原因?

梅雨は、春から夏に移行する時期の季節を指します。
雨が多くなり、日照が減ってしまいます。[2]

  • 湿度 雨が続くので湿度が高くなる
  • 気温 寒い日もあれば蒸し暑い日もあり、寒暖差がある
  • 気圧 台風の発生が多く、低気圧に

梅雨の気候は、暑い日でも湿度が高く、汗をかきにくくなります。
また、湿度が高いので、汗をかいても蒸発しにくいのです。

厚生労働省の「健康のために水を飲もう講座」によると、私たちは普通に生活しているだけでも1日に2.5Lもの水分が失われています。[3]

呼吸や汗として、0.9Lの水分を体の外に出しているのですが、汗をかきにくいと、排出が減ってしまうので、体内に水分が溜まってしまいますよね。

水分をうまく体外に排出できないことが、梅雨時期の体調不良の原因のひとつと考えられています。

最近は、天候や気温・湿度・気圧などの気候の変化による体調不良の総称として「気象病」と呼ばれているようです。[4]

梅雨の体調不良を漢方的に考えると

漢方では、余分な湿気のことを「湿邪(しつじゃ)」と呼んでいます。
漢字のとおり、「邪魔な湿気」という意味ですよね。
必要のない湿気が、体にあることで様々な体調不良を引き起こすと考えられています。

さらに「湿邪」は、体の水分の巡りを悪化させてしまうのです。
水の巡りが滞った状態を「水滞(すいたい)」といいます。

「水滞」も漢字のとおりの意味ですね。
水分は、体内を巡ることで、水分代謝や免疫などの役割を果たたします。
その水の巡りが滞ってしまうので、むくみやめまいの原因になるというわけです。

梅雨時期は「湿邪」と「水滞」が起こりやすく、いろいろな症状が出てしまうと考えられます。

自分にあった漢方を探すときには「証(しょう)」を確認する

薬局やドラッグストアで、かぜ薬を購入するときは、かぜの症状にあった薬を選びますよね。
鼻炎に効果的な薬を飲んでも、咳には効きません。

同じように、漢方薬も症状に合わせて選びます。

ただし、漢方薬の場合は症状だけではなく、今現在の体質や体調など体の状態によっても使い分けるのです。

この体質や体の状態のことを「証(しょう)」といいます。

一番シンプルな「証」は「虚証」と「実証」

「証」の分け方のひとつが、下の表の「虚証(きょしょう)」と「実証(じっしょう)」です。

虚証
(きょしょう)
必要なものが体に足りない状態
→必要なものを補給する漢方を選ぶ
  • 体力がなくて弱々しい
  • 細くて華奢(きゃしゃ)
  • 顔色が悪くて肌が荒れやすい
  • 細くて小さな声
  • 胃腸が弱くて下痢をしやすい
  • 寒がり
実証
(じっしょう)
余分なものが体にある状態
→余分なものを減らす漢方を選ぶ
  • 体力がある
  • 筋肉質でガッチリ
  • 血色がよく、肌ツヤがある
  • 大きくて太い声
  • 胃腸が強くて便秘気味
  • 暑がり

症状が同じでも、「虚証」と「実証」では使う漢方薬が違うということがわかりますよね。

自分がどんな「証」なのか、わからない場合は、薬剤師に相談して「証」についてアドバイスしてもらいましょう。

梅雨の体調不良におすすめの漢方薬4つ

梅雨の体調不良におすすめの漢方を、症状別に4つ紹介します。

頭痛には五苓散(ゴレイサン)

梅雨時期の頭痛は、体内の水の巡りが悪くなった状態である、「水滞(すいたい)」によって起こると漢方では考えます。
五苓散(ゴレイサン)は、頭痛の原因となっている「水滞」を改善する漢方です。

体内の水が外に排出されない、梅雨時期の「湿邪」にピッタリですよね。

五苓散は、「虚証」「実証」どちらの方にも用いられます。

効能又は効果
口渇、尿量減少するものの次の諸症
浮腫、ネフローゼ、二日酔、急性胃腸カタル、下痢、悪心、嘔吐、めまい、胃内停水、頭痛、尿毒症、暑気あたり、糖尿病

引用:ツムラ添付文書

ある研究で、

「3ヶ月以上の慢性頭痛あり、1週間に1回以上頭痛が起こる患者」かつ「雨の前日に頭痛が悪化するケースの90.5%」に五苓散が有効とされています。[5]

どうしても頭痛がひどい場合は、五苓散と一緒に鎮痛剤も飲むことが可能。

頭痛について詳しく知りたい方には、こちらの記事がおすすめです。
頭痛は疲労のサイン?頭痛と疲労の解消ポイントを解説

めまいには苓桂朮甘湯(リョウケイジュツカントウ)

漢方では、めまいの一番の原因は、体内の水の巡りが悪くなった「水滞」と考えています。

苓桂朮甘湯(リョウケイジュツカントウ)は、めまいの原因である「水滞」を改善する漢方です。

タイプとしては、「虚証」の方に合います。

効能又は効果

めまい、ふらつきがあり、または動悸があり尿量が減少するものの次の諸症
神経質、ノイローゼ、めまい、動悸、息切れ、頭痛

引用:ツムラ添付文書

また、「気」と呼ばれるエネルギーの巡りが、逆流してしまう「気逆(きぎゃく)」も改善します。

ストレスによるめまいで処方され、改善した症例もあります。[6]

胃腸の症状には六君子湯(リックンシトウ)

胃の中の水の巡りが悪くなると、胃腸の調子が悪くなってしまいます

六君子湯(リックンシトウ)は、胃腸の働きを良くする効果と、「水滞」を改善する効果の両方を持つ漢方です。

胃腸が弱い方におすすめの「虚証」に合う漢方薬になります。

効能又は効果
胃腸の弱いもので、食欲がなく、みぞおちがつかえ、疲れやすく、貧血性で手足が冷えやすいものの次の諸症:
胃炎、胃アトニー、胃下垂、消化不良、食欲不振、胃痛、嘔吐

引用:ツムラ添付文書

胃炎について、詳しく書かれた記事はこちらです。
ストレスが胃にくる人は注意!慢性胃炎とは?

関節痛には防已黄耆湯(ボウイオウギトウ)

漢方では、ひざなどの関節に水が溜まって関節痛が起こると考えます。
また、むくみや水太りなども体内の水の巡りが悪化している状態です。

防己黄耆湯(ボウイオウギトウ)は、水分の排泄を助けて、水の巡りを改善します。

効能又は効果
色白で筋肉軟らかく水ぶとりの体質で疲れやすく、汗が多く、小便不利で下肢に浮腫をきたし、膝関節の腫痛するものの次の諸症
腎炎、ネフローゼ、妊娠腎、陰嚢水腫、肥満症、関節炎、癰、せつ、筋炎、浮腫、皮膚病、多汗症、月経不順

引用:ツムラ添付文書

どちらかというと、「虚証」の方に合う漢方薬です。
体力が中程度から虚弱で、疲れやすい方におすすめします。

漢方薬で梅雨の体調不良を改善しましょう

今回の記事では、以下を中心に解説しました。

  • 3人に1人が、梅雨時期に体調不良を経験
  • 梅雨時期に起こる症状は、頭痛、めまい、胃の不調、関節痛など様々
  • 梅雨の体調不良の原因は、「湿邪」と「水滞」
  • 漢方の「証」とは、体質や体調などのこと
  • 頭痛には五苓散、めまいには苓桂朮甘湯、胃の不調には六君子湯、関節痛には防己黄耆湯

毎年必ずやってくる梅雨シーズン。
漢方でしっかり対策して、梅雨を乗り越えましょう。

 

【参照】

[1]秋田県医師会>秋田県医師会について|広報活動>シュウカンHealth 『梅雨と関節痛』

[2]気象庁 > 各種データ・資料 > 梅雨入りと梅雨明け(確定値)

[3]健康のため水を飲もう講座~からだと水の関係~,厚生労働省

[4] 一般社団法人 広島県医師会 > 広島県民のみなさまへ > 健康情報 > 気象病

[5]日本医事新報社>  No.4850 > 学術・連載 > 雨の前の頭痛(気圧低下に伴う頭痛)× 五苓散[漢方スッキリ方程式(1)]

[6]中村記念 愛成病院 > 漢方コラム > ストレスによるめまいと漢方薬

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